妹の恋人[完]
「知っている子から?」

手に取ることもできずに困っていた俺に、高橋さんが問いかけてくる。

ちらっと彼女を見ると、怒っている感じでもなく。もちろん、うれしそうにしているわけでもないけど。

「手にとってもイイ?」

なんてちょっと間抜けなことを聞いてしまった。

「ふふ。もらったのは私じゃないんだから。ちゃんと受け取ってあげたら?」

靴を履き替えてくるね、と隣の列の自分の下駄箱へ向かってしまった高橋さん。

なんだか大人だな。受け取った俺はこんなに困惑しているのに。

ちょっとためらいはあるけど、このまま下駄箱とにらめっこしていることもできないので、靴の上から箱を取り出してみる。

さすがに中身のチョコにまでは靴の匂いは移っていないはず。

そんな変なことを気にしつつ、ひとつの箱を裏返してみても、とくに名前らしい記載もなくて。

どうみても手造りではなくて、市販のチョコレートにしか見えない。

表に名前がないのは、中にカードでも入っているんだろうか。

とりあえず捨てることもできないので鞄の中へとしまい、靴を履き替えて出口で待っている高橋さんのもとへと急いだ。
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