妹の恋人[完]
すっかり冷めてしまったコーヒーに口を付けて、自分で涙をぬぐった高橋さん。

その涙を拭うのは俺だったらよかったのに。

なんだかどうしたらいいのかわからなくて、動くことができなかった。

「カナコちゃんはとてもいい子で、大好きなの」

飲み終わったコーヒーのカップを握りしめたまま、ずっと空になったカップを見つめている高橋さん。

「コウヘイ君もカナコちゃんのことを大切にしているよね。カナコちゃんを見るコウヘイ君の目がすごく優しいからすぐにわかるよ」

カナコは高橋さんのことをとても気に入っていて、そしてすごくなついていると思っていた。

実際、カナコは高橋さんになついているんだと思う。

でも、高橋さんはそんなカナコのことで、涙が出てしまうほどに悩んでいたんだ。

そんなことにも気がつかずに俺は過ごしていたなんて。

カナコは俺の大切な妹だから。大好きな妹だから、かわいくて仕方がないと思っているのは事実。

周りの友達から「シスコン」と言われるほどに、カナコを可愛いと思っているのも事実。

高橋さんの目にも、同じようにうつっていたんだろう。

でも、カナコは高橋さんを認めてくれた。俺も、いつかカナコが彼氏を連れてきたら、認めてあげたいとは思っている。

「俺は・・・サトミのことが好きだと思っている」
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