妹の恋人[完]
どうしたらいいのだろうか。

自分の気持ちを正直に伝えることしかできないと思った俺は、コーヒーカップごと高橋さんの手を両手で包み、下を向いたままの彼女の顔をじっと見つめた。

「カナコは大切な妹で、生まれたときから俺が守るんだって思っていたんだ」

俺が小学1年生の時に生まれた、俺の小さなカナコ。

「俺の好きになった人を、カナコが認めてくれたことがとてもうれしい」

カナコが認めてくれるような、素敵な人を好きになれてよかったと思う。

俺の言葉に、瞳に涙をたくさんためたままの高橋さんが顔をあげた。

あふれそうな涙だけど、俺の目をまっすぐ見つめてくる。

「本当に・・・?」

いつも一緒にいるだけじゃ、思いは伝わらないんだと初めて知った。

繋いだ手だけでは、気持はどんどん不安になってしまうんだ。

どんなに近くにいても、思っていることは口に出さないと相手に伝わらない。

「サトミが好きだよ」

だから、一緒にいたいと思うんだ。好きな人だから。

大粒の涙があふれ出した高橋さん。
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