妹の恋人[完]
俺はポケットからハンカチを取り出し、そっと彼女の頬を拭う。

それでもあふれ出す涙に、彼女は自分の手で俺のハンカチを受け取ると、目がしらに当てて声を押し殺してしばらく泣き続けていた。

ふと気がつけば、近くの席に座っているお客さんの視線を感じて、焦ってしまった。

でも、泣かせているのは俺なんだ。これはまぎれもない事実。

立ち上がり高橋さんの隣に座りなおした。

お店の中だし、ほかのお客さんの視線も気になるけど。

隣で泣き続ける高橋さんをぎゅっと抱きしめ、いつもカナコにするようにやさしく頭をなでてあげた。

「コウヘイ君、私も好きなの」

しばらくして、目を真っ赤にはらした高橋さんがぽつりとつぶやいた。

「うん、知ってるよ」

ゆっくりと俺を見上げて、恥ずかしそうに笑う高橋さん。

「さっきのは、うれし涙」

うれしくて涙か止まらなくなったの、と俺の背中に手をまわして抱きついてきた。
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