妹の恋人[完]
「タクミ・・・」

呟くように呼ばれたその名前は俺とは違って呼び捨てで。

彼が誰なのか、高橋さんとどういう関係なのか。

そんな疑問よりも先に、呼び捨てだということの方が気になって。

「やっぱサトミちゃんだ!久しぶりだね!」

タクミと呼ばれた彼は、まるで子犬のようにしっぽを振っているんじゃないかと思うくらい元気で。

俺たちのそばへやってくると、ごく当たり前というように高橋さんの隣に座った。

は?なんで?

さすがのおれもそんな彼にびっくりして。

「た、タクミ、どうしてここにいるの?」

俺には彼からしっぽが見える気がする・・・。

そんな気分になるほど、人懐っこい笑顔で高橋さんにすり寄っている彼。

「ああ、友達と映画の帰りでね。カフェにサトミちゃんが見えたから寄ったの」
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