妹の恋人[完]
ちらっとも俺の方を見ることもなく、ひたすら高橋さんに話しかけているタクミ。

「タクミ、ストップ!」

タクミの前で右手をあげると、少し強い口調で彼のおしゃべりを止める高橋さん。

壊れた蛇口のように、口からあふれ出していた言葉もその一声で静かに止まって。

「コウヘイ君、ごめんね。彼は板倉タクミといって、2つ下の幼馴染なの」

中学入学前に、親の仕事の都合でアメリカへ引っ越した、近所に住んでいた幼馴染だったらしく。

「タクミです。サトミちゃんの彼氏さん?」

今やっと俺の存在に気がついた、とでも言いたげな目つきで俺と目を合わせたタクミ。

「浅野コウヘイです。1年生なの?」

近くにある私立高校の制服を着たタクミは、制服のネクタイをきゅっと締めなおすと、うん!と元気にうなずく。

「もう、、、お友達が待っているんじゃない?早く行きなさいよ」
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