妹の恋人[完]
両手でタクミを押すようにして、隣の席から追い出してしまった高橋さん。

「あはは。サトミちゃん、今度は俺ともデートしてよね!」

じゃーね!と走り去っていくタクミを見ながら、大きなため息をついた高橋さん。

「本当にごめんね、あの子小さいころからずっとあんな調子で。悪い子じゃないのよ」

まるで弟を可愛がるような目をして走り去って行った彼の後姿を見送る高橋さんに。

彼との関係がただの幼馴染なのか、それ以上の関係なのか。

そんなことよりも、俺もきっとカナコを見るときはあんな目で見ているんだなんて思ってしまって。

そうか、タクミをみて嫌だと思わなかったのは、きっとカナコに似ているんだと気がついた。

カナコも人懐っこい方で、走りだしたら止まれないタイプだと思う。

入学式が終わったばかりだろうから、高校1年生と言っても中身はまだ中学生と大差ないはず。

幼さが残っていたことに自分で納得して、なんだかおかしくなってしまった。

「え、どうしたの?」
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