妹の恋人[完]
くしゃくしゃっと素早く髪の毛を乱すと、ふっと笑った。

「ね?」

さあ、歌おう!とアツシが歌っていたマイクを横から奪うと、まるで自分の歌ですとばかりに歌いだして。

「うそーーーーカヨちゃん、俺の歌ーーーーー」

横で気持ちよく歌っていたのにマイクを奪われたアツシの悲鳴が響き渡って。

「きゃはは、アツシ君かわいそー」

皆がアツシを慰め、でも誰もマイクを渡そうとはしなくて。

最後まで気持ちよく歌いきったカヨちゃんが、相変わらず俺の横に座って満足していて。

「コウヘイ君も、歌っとけ!」

なんてマイクを渡してくるカヨちゃんは、顔だけ横を向いていて俺と目を合わそうとはしてくれなかった。


「今日はどうするー?」

まだ夏休みは終わっていないので、大学はもちろん休みで。

いつもなら終電や始発で家へ帰る皆も、今日は何時まででも遊ぶぞって気合いが伝わってくる。

俺も明日は夕方からのバイトがあるだけだったので、朝帰っても大丈夫だと思っていて。

母さんにも帰るかどうかわからないからと伝えておいたので心配することもなかった。

「あ、私ね、一人暮らし始めたのー!」
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