妹の恋人[完]
「え?」

俺の目の前で、どんどんあふれてくる涙をみてどうしたらいいのかわからなくて。

でも、悲しそうというよりも苦しそうなその涙に、居てもたってもいられずにカヨちゃんの頭を抱き寄せた。

そのまま俺の腕の中で泣き続けるカヨちゃんの姿に、誰も気がつかないようで。

声を出さずにただ流れる涙を拭うこともなく。

ぎゅっと俺のシャツの胸元を握りしめ、静かに肩を震わせていた。

俺もこの涙の意味が分からずに掛ける声も思いつかなくて。

そっと抱き寄せた腕にちょっとだけ力を込めて抱きしめてみた。

「・・・新しいおかあさんね・・・」

呟くように吐き出された言葉。

はじめは聞き取れなかったけど、え?と聞き返したら顔をあげて話し始めたカヨちゃん。

顔を見ると、すごく近くて。

自分で抱きしめたくせに、見上げている顔が近くて、ドキドキしてしまう。

「お父さんの愛人だったんだって」
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