妹の恋人[完]
カヨちゃんが10歳の時に家を出ていったお母さん。

どうして自分を置いて行ったのかと当時は恨んだけど、今はお母さんの気持がよくわかるという。

新しいおかあさんの連れ子として紹介された、新しい弟。

兄弟のいなかったカヨちゃんは、すごくうれしかったらしい。

その弟がある日カヨちゃんに向ってお姉ちゃんと一緒に暮らせてうれしい、と言ってくれたんだという。

「ずっとこの日を夢見ていたって。本当のお父さんと、お姉ちゃんが家族になってくれてうれしいって」

その、弟の言葉の意味をお父さんに問いただして、実は弟はお父さんの子供だというこがわかったという。

高校生の時、初めて紹介されたおかあさんだったけど、実はもっと昔から付き合っていて。

「変でしょう?お母さんよりも付き合いが長かったんだって」

お母さんと結婚する前から付き合いのあったその女性との間に生まれた、新しい弟。

「弟は嫌いじゃないの。でも、許せない」

新しいおかあさんも、新しい弟も。

ずっと自分を裏切っていた存在なんだと。悲しそうにそう言うカヨちゃんは、そんな風にしか思えない自分も嫌だと再び涙を流した。

「お父さんはずっと私とお母さんを裏切っていたなんて。どうしてお母さんと結婚したんだろう?」

どれだけ考えても許すことができなくて、でも一番許せないのがお父さんで。

従姉の海外赴任を機に家を出る決意をしたという。

一通り話してすっきりしたのか、いつの間にか涙は止まっていて。

俺によりかかっていた体を起こし、俺の腕の中から離れたカヨちゃん。

「ごめんね、ありがとう」
< 324 / 587 >

この作品をシェア

pagetop