妹の恋人[完]
「俺に何ができるんだよ・・・」

話を聞くことは出来ても、力になってあげることなんて、きっとできない。

「いいんじゃね?そのまま普通にしていれば」

普通?普通ってどういうこと?

アツシの話を聞けば聞くほど、お酒のせいかうまく働かない頭で必死に考えてみるけど、どうも目が回ってきてうまく考えることができなくて。

「コウヘイはそのままでいいんだよ」

今度は冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを俺に渡し、俺の肩をぽんぽんっと叩いてからソファの方へ歩いて行った。

そんなアツシの後姿を見ながらさっき聞いたカヨちゃんの話を思い返してみる。

きっと、彼女の中でいろんな思いが交差しているんだろうけど、こうして友達と一緒にいるときは表に出さないんだということがわかって。

現に、今女の子たちとはしゃいでいる彼女は、俺の前で涙を流していた彼女と同じとは思えないくらいで。

ソファの方を見ると、テレビを見ながら騒いでいるカヨちゃんの横顔。

さっきまでの涙は、幻だったの?

お酒のせいでうまく頭が働かないのだったら夢であってほしいなんて。
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