妹の恋人[完]
「ただいまー!」

走って家の中へ行くところなんて、やはりまだ小学生なんだなと実感できる。

その日の夕飯は、俺が不倫をしているだのなんだのでカナコが真剣な顔で母さんに報告するから、母さんまで本気で心配しだしちゃって大変だった。

「あまりそんなこと言っておにいちゃんをからかうようなら、もうスイミングの送り迎えはやめるよ」

「えーやだぁーおにいちゃん、ごめんね?」

俺の腕にぎゅっと抱きついて謝るカナコがかわいくて、頭をなでながら二人で笑って。

「人妻に興味はないよ」

「ヒトヅマって?」

「結婚している女性のことよ。もう、コウヘイも変な言葉教えないのよ」

俺とカナコの会話を聞いてあきれていた母さんも、食事の片付けをしながら笑っていて。

カナコの不倫という言葉の知識は、母さんがよく見ている昼のドラマの影響だと思うけど、とは言えなくて。

食後にカナコの宿題を見てあげ、俺も自分の勉強を少ししてから眠りについた。



夏の日差しも弱くなり、半袖では肌寒くなってきたある日。

たまたま一人で食堂へ行ったら、窓際の席で一人で昼食を食べているカヨちゃんを見かけた。
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