妹の恋人[完]
「あ・・・」

思わずもれた自分の声に、顔をしかめてしまうとコートの中から青山さんの豪快な笑い声が響いてきた。

「あはは。ブランク埋めるためにも早く中へ入ってこい」

鞄をコートわきにあるベンチに起き、カヨちゃんを振り返ると行ってらっしゃいと手を振っていて。

そのまま落ちたボールを拾い、中へ入っていくとすぐにゲームが始まった。

細かい決めごとをしなくてもなんとなくチームも別れ、いつの間にか皆が真剣になるゲーム。

「新人!パス!」

「浅野です!」

「おい新人!」

「浅野ですってば!」

ボールをやり取りしながら繰り返されるこんな会話も嫌いじゃなくて。

ずっと笑顔でボールを追いかけるなんて、いつ以来だろう?

まさかまたこうして、楽しくバスケットをできる日が来るなんて、自分でも信じられない。

「あはは、お前面白いな、コウヘイ」

「な!青山さん、名前覚えていたなら新人ってやめてください!」
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