妹の恋人[完]
それからしばらくバイトの日々が続き、朝は雨の日以外は毎日バスケットに顔を出した。

同じ時間に電車に乗るようにしていて、カヨちゃんのマンションの前を通って大学へ行くようになって。

朝、俺が通る時間にマンションの前にカヨちゃんがいたら、一緒にバスケットに顔を出していた。

着いてきた日は何をするでもなく。

近くに転がっているボールをきれいに拭いたり、見学に来ている人と楽しそうに話をしたり。

俺にタオルや水を渡してくれたりとそれなりに楽しんでいるようで。

俺も、深く考えないようにして毎日を過ごしていた。

「ねえ、コウヘイ。家庭教師のアルバイトしない?」

ある日、朝ご飯を食べている時に母さんが持ってきた家庭教師の話は、なかなか魅力的で。

「お母さんのお友達の娘さんでね、今度高校受験なんだけど、今までお世話になっていた家庭教師の先生が急にやめちゃったらしいのよ」

俺の通っていた中学の3年生だという。数学が苦手で、志望校は俺の卒業した高校で。

「コウヘイの大学の話になったら、ぜひお願いしたいって」

週に2日、塾のない日にお願いしたいという。

成績も悪くないようで、俺の得意な数学が苦手ということで条件も悪くなさそう。

焼き肉屋のバイトの休みを予備校の無い日と合わせれば、可能じゃないだろうか。
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