妹の恋人[完]
家庭教師までまだ数時間。

「私もアルバイトしようかなって思ってね」

飲み終わったマグカップをテーブルに置き、横にいる俺の肩に頭を預けてきた。

「お父さんにね、一応報告したの」

といっても、まだバイト先が決まったわけでも、探したわけでもなく。

ただ、バイトをしようと思う、と電話で伝えたんだという。

「最近ね、週に何度か電話で話しているんだよ」

まだ許せない気持ちはあるけど、ある日弟から電話がかかってきたらしい。

お姉ちゃんに会いたいと言われたのがきっかけで、実家近くの公園まで出向いたんだという。

「久しぶりに会った弟がね、大きくなっていてびっくりだよ」

ほんの数カ月、姿を見なかっただけなのに、なんだか身長が伸びていて、男らしくなっていたんだという。

「しばらく公園で話をしていてね。お父さんとお母さんが毎日夜になるとさみしそうだって」

僕が寝た後、二人でお姉ちゃんのことを話しているんだよって教えてくれた弟。

「話を聞いていたら、なんだかもうどうでもよくなっちゃって」

弟と別れた日、お父さんに電話をしたんだという。
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