妹の恋人[完]
「すごく申し訳ないって言われてね。黙っていたことをすごく謝ってた」

それから、一度だけ実家へ顔を出し、新しいお母さんとも話をしたんだという。

そんな話を全く知らなかった俺。

大学では皆がいるので話したくなかったのかもしれない。

ゆっくり話をする時間がなかったのもあるけど、それでも。

「なにも知らなくて・・・」

悩んでいたことに気が付くこともできず、なんだか、悔しい。

「ううん、コウヘイ君に話をする機会がなかったし。黙っていてごめんね?」

ぎゅっと腕に絡まったカヨちゃんの腕に、力が入った。

「でね、アルバイトの話をしたら、お父さんに反対されちゃって」

「え?そうなの?」

反対する理由が分からなくて、とても驚いてしまう。

「うん。よく話を聞いたら、弟の家庭教師をしてほしいってお母さんが」

ほんの少し赤い頬は、きっと照れているんだとわかった。

新しいお母さんや、実のお父さんとの関係も、少しだけどよくなってきた証拠で。

もともと、弟ができたことを喜んでいたようなので、家庭教師の話もすぐに引き受けたのだという。

「コウヘイ君が家庭教師のバイトを始めて、話を聞いていたから引き受けることにしたのよ」

「え、俺?」
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