妹の恋人[完]
そんなにあれこれ話をしたつもりはないけど、カヨちゃん曰く、教え子の成績が上がるとうれしそうに話をしていた俺を見て、自分の力で成績をあげる手助けができるのならと考えたらしい。

「そう。将来数学の先生目指しているんでしょう?私も教員試験目指そうかな?」

ちょっと単純すぎかな?なんて笑うカヨちゃんがかわいい。

人間はどんな時でもよい方向に向かっている時は素敵な笑顔が見えるんだ。

いつでもそんな笑顔でいてほしいと思うから。

新しい家族との関係が、もっと自然とうまくいくと信じていたい。

「年末は、実家へ帰るね」

俺を見上げたその瞳には、涙が浮かんでいて。

辛い、悲しい涙じゃなくて、幸せがあふれているんだとすぐにわかる。

カヨちゃんが腕をからめているのを解き、じっと俺を見つめてきた。

思わずどきっとしてしまう。

なんだか見つめられるのが恥ずかしくて、ギュッと抱きしめてしまった。

「コウヘイ君、ありがとう」

俺の腕の中で泣いているカヨちゃん。

そっと体を離すと、顔をあげてくれたのでそのままそっとキスをした。
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