妹の恋人[完]
「私寝ちゃったんだね、本当にごめんね?」

もう少ししたらバイトへ行く時間だよね、なんて言いながらも忙しそうに動き回っていて。

・・・出かけるのは俺だから、落ち着けばいいのに。

なんだかちょこまかと動き回るカヨちゃんがおかしくて。

「どこか、出かけるの?」

思わず聞いてしまった。

「え?だって家庭教師でしょう?」

まあ、確かに俺はバイトだけど。

「いや、あわてているからカヨちゃんも出かけるのかと思って」

俺の言葉にはっと我に返ったのか、顔を赤くして手を止めたカヨちゃん。

洗い物を終えて手を拭き、恥ずかしそうに俺のそばへやってきて。

赤い顔のまま、涙を浮かべて俺の前にぺたん、と座った。

「やだもう、私が出掛けるわけじゃないのにね?」

両手で自分の頬を抑えながら、俺の目の前で小さくなっているカヨちゃん。

そんな彼女がかわいくて。

俺から見えるのは、俯いている彼女の頭で。

そっと頭の上に手を乗せてなでると、顔をあげて俺と目があった。

「コウヘイ君・・・」

「はは。かわいいよ、カヨちゃん」
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