妹の恋人[完]
年末になり、寒さが増したころに体調が悪化して。

「ソウタ・・・」

思い出すだけで涙が止まらないというカヨちゃん。

カヨちゃんの中では、いつも元気で笑っている弟しか知らなかった気持から、今だに信じられないのだろう。

「一緒にいたのに。どうして気がついてあげられなかったんだろう・・・」

もし、もしカナコが同じように病気で、俺が知らないだけだったら・・・???

考えただけで涙が出てきてしまう。俺はきっと耐えられないから。

止まらない涙を必死にこらえようとしているカヨちゃんを、そっと抱き寄せる。

彼女の肩に自分の顔をうずめ、浮かんでくる涙を必死にこらえた。

「コウヘイ君」

しばらくしてから顔をあげたカヨちゃんに名前を呼ばれ、彼女から少しだけはなれて顔を見ると、涙は止まっていて。

「ありがとう」

ぎこちない笑顔だけど、そういって笑ってくれた。

「俺は何もできなくて」

彼女を受け止めるどころか、一緒になって涙を浮かべていただけなのに。

力になることができなくて、なんだか自分が情けなくて。

「私ね、大学辞めて実家へ帰ることにしたの」
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