妹の恋人[完]
そっと俺から離れ、背中を向けて小さくなってしまったカヨちゃんに声をかけることもできず。

自分の気持ちもうまく表現できないくらいに複雑で。

浮気・・・。

それとも、もともと本気じゃなかった?

電話で、落ち込んでいた彼女の声を聞いて飛んできたのに。

どうしてこうなってしまったのだろうか。

「今まで、ありがとう」

涙声で背中を向けてそういうカヨちゃんに、俺は彼女の肩をぽん、と叩くと、立ち上がった。

「カヨちゃん」

彼女の中で、もう俺は隣にいてほしい存在じゃないということは確かなようで。

俺自身も、本当は気が付いていたのかもしれない。

彼女が、俺以外の男と仲良く話をしているのを、見ていて辛いと思わなかったわけじゃない。

でも、それをとがめることもできず、嫌だと思う自分が小さい男のようで。

それとも、ひょっとして、そこまで彼女のことを・・・。

「今日はここにいるの?それとも実家へ?」

「え、今日は通夜があるから、帰ります」

俺の言葉に驚いたのか、涙をたくさん浮かべた顔で俺を振り返ったカヨちゃんは、不思議そうな顔をしていて。

「じゃあ、送るよ。車で来たし」
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