妹の恋人[完]
自分に言い聞かせてリビングへ戻ると、小さなボストンバッグを持った彼女がソファの前に立っていた。

「あ、あのね、えっと」

「もういい?じゃあ行こうか」

彼女の言葉を遮るようにして、部屋を出て靴を履く。

振り返るとどうしたらいいのか悩んでいるのだろう。廊下で俺の姿を見ながら立ちすくんでいるカヨちゃんがいて。

「おいで。ちゃんと送っていくから」

にっこり笑いかけると、申し訳なさそうに近寄ってきたカヨちゃんも、ゆっくりと靴をはいた。

「ちゃんと、戸締りはできた?」

「うん、大丈夫だと思う」

扉を開けて外へ出ると、すっかり太陽が顔を出していて。

今日はとてもいい天気になりそうだ。

無言のまま、コインパーキングへと歩いて行く。

俺の後ろをついてきているのは、足音でわかる。

振り返ることもせずに、でも歩幅は彼女に合わせて。

ゆっくりと歩いて駐車場に着くと、彼女から荷物を受け取り、後部座席に乗せた。

「どうぞ」

助手席のドアを開け、彼女に座るように勧めるけど、なかなか座ろうとしない。
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