妹の恋人[完]
「あの、やっぱり私自分で行くから・・・」

「いいよ。最後に送らせて」

最後。

自分で口にして、なんだかとても悲しい言葉だと思う。

しばらくしぶっていた彼女も、俺が譲る気がないことを悟ったのか、しぶしぶ車に乗り込んだ。

カヨちゃんが座ったことを確認してから助手席のドアを閉め、小さくため息を吐いてしまう。

ふと空を見上げると、雲ひとつなくて。

「・・・行くか」

運転席まで回り込み、シートベルトをしてからエンジンをかける。

ナビでカヨちゃんの実家までをセットし、車を動かす。

ほとんど会話は無いし、なんだか気まずいけど。

きっと、彼女と二人きりになるのは、今日が最後。

「カヨちゃん、正直に話してくれてありがとう」

ほとんど寝ていないはずなのに。

なぜか冷静な俺がいて。

運転しているから彼女の顔を見ることはないけど、まっすぐ前を向いたまま、返事をしないカヨちゃんへと語り続けた。
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