妹の恋人[完]
私立高校の受験の日。

家を出る前にカナコはいつものようにぎゅーっと抱きついてきた。

「おにいちゃんは大丈夫!がんばってね!」

「ありがとう、がんばるよ」

ぎゅっと抱きしめ返して、小さなカナコの頭をなでた。

うん、頑張れる。いつもどおりでいいんだ。

試験は順調に終わり、問題も全部埋めることができた。きっと大丈夫。

試験後、家にいる母さんに電話をして無事に終わったことと塾へ寄ることを伝えた。

塾へ寄ると同じように私立の試験を受けた後の生徒が何人か来ていた。

先生に報告して教室をのぞくと、そこには一人座っている高橋さん。

彼女も今日試験を受けたはず。終わってすぐにここへ来たんだろうか?

「お疲れ様」

彼女のそばへ行くと、ぱっと笑顔になった高橋さん。

「浅野君、お疲れ様」

どうだった?私は大丈夫だと思うわ。自身に充ち溢れた彼女の顔に、ほっとした。

「俺も大丈夫だと思うよ。次は本番だね」

その前に卒業式ね!そう笑うと、鞄の中から参考書を取り出して勉強を始めてしまった。

俺は勉強せずに今日は家へ帰ろうと思っていたけど、そんな高橋さんを見ていたらなんだか落ち着かなくて隣に座って少しだけ勉強していくことにした。

1時間くらいしてから、今日は早めに切り上げましょう、と帰り支度を始めた高橋さん。

いつものように二人で塾を出る。
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