妹の恋人[完]
シャワーを浴びて出てくると、今日の分を終わらせたらしいカナコが待ちわびていて。

問題を読んでから、どこがわからないかを聞き、丁寧に説明しながらできるだけ自分で考えさせて。

「おにいちゃん、説明の仕方が先生っぽくなってきた」

なんてカナコに笑われてしまった。

「でもね、前よりも説明がわかりやすくて好き」

宿題が終わって、一緒にお茶を飲みながらカナコがそんな事を言って。

横で聞いていた母さんも、頷きながら笑っていて。

塾の講師の仕事も、楽しい。

質問に来た生徒の顔が、ぱっと明るくなる、あの瞬間がなんともいえない。

自分の説明で理解してくれた時は、とにかくうれしくなれるから。

「でも、働きすぎじゃない?」

母さんが俺のことを心配してくれて。

確かに、毎日昼間は塾で過ごし、週に3回は夜だけ焼き肉屋のバイトへ行っている俺。

そこまで頑張ってお金をためる理由もないけど、初めてのバイト先でもある焼き肉屋にはかなり思い入れがある。

一緒に働いている仲間も、いい人ばかりだし。

「まあ、でも体がつらいこともないからね」
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