妹の恋人[完]
呆然として、握らされたその紙をみると、丁寧な字で名前も書いてあって。

やはり、ナンパだったんだろうか。

初対面の女性に、こんな風に紙を渡されたのは初めてで、どうしたらいいのか困ってしまう。

きれいな人だったけど、好みのタイプとかそういうのでもないし、もともとそんなに自分から女性に話しかけるのが得意でもない俺。

「困ったなぁ・・・」

このまま捨てていいものだろうか?

近くにあった屑かごと、手の中にある紙を交互に見ながらどうしようか迷っていると、着替え終わったカナコたちが走ってやってきた。

「おまたせぇ~って、おにいちゃん何変な顔してるの?」

リボンのついた、可愛らしい水着のハナちゃん。カナコもシンプルだけど、女の子らしい可愛い水着で。

さっきの女性と比べると、なんとも清潔感が漂う二人で。

「ああ、なんでも・・・」

ないと言いかけたとき、俺の手の中の紙を、カナコに取られてしまった。

「やだ、これ何?」

名前と番号、アドレスの書かれた紙をみて、カナコの眉間にしわが寄っている。

横からそれをのぞき見たハナちゃんも、なんともいえない変な顔をしていて。

「ああ、さっき知らない女の人から渡された」

「え、それってナンパ!?」

ハナちゃんの言葉に、カナコが手の中で紙をぐしゃっと丸めて、近くにあった屑かごに投げいれてしまった。
< 434 / 587 >

この作品をシェア

pagetop