妹の恋人[完]
「あ」

思わず声が出てしまう。

決して、ほしかったわけじゃなかったけど、勝手に捨ててしまうのもどうなんだろうか?

「カナコ」

少し怒ったように声をかけると、なんだかすごく機嫌の悪い顔で俺は睨まれてしまった。

「おにいちゃん、ナンパされた女性について行くつもりだった?」

「は?」

どうやらカナコは、俺があの連絡先を欲しかったと思っているらしくて。

「あのなぁ」

「さいてーだね。ナンパなんて」

いや、ナンパされたのは俺であって。

カナコもそれはわかっているようだけど、どうしても納得ができないようで。

「カナコ。人のものを勝手に処分するのはよくないと思うよ」

「やっぱり欲しかったの?連絡先!」

何を言っても、きっと今のカナコには聞こえない。

そう判断した俺は、小さくため息をつくと、カナコの隣で困った顔をしていたハナちゃんと一緒に、プールへと歩き出した。

「もう、まってよ!」
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