妹の恋人[完]
「うん、やってみた!おもしろいね。なかなか高得点が出なくてね」

そんな俺との会話を聞いた他の子もやってきて、そっと横から覗き込んでいて。

「じゃあさ、今日は3人いるから、皆でそれぞれ同じゲームやろうか」

ルールは、3人で合計した得点が一万点を超えるまで頑張ること。

1人で高得点は無理でも、3人なら1時間もあればきっとすぐにできるはず。

「えー、難しいよ」

「じゃあ、クリアした順に得点をホワイトボードに書こうか」

おなじ部屋にいるけど、会話すらしたことのなかった彼らが、こうして一緒に何かをできるまでになるには、それなりに時間がかかったようだったけど。

これは、長谷川先生がずっと地道に彼らに付き合ってきた証でもあるんだと俺は思っている。

学校という社会に馴染めず、自分と闘っている彼ら。

大人としては、いつかまた学校へ行って欲しいと思うんだけど。

急いではだめだからね、と長谷川先生の言葉を信じて、彼らのペースに付き合うことにしてみた。

それが、どんな結果になるのかは俺には分からないけど。

でも、こうして笑顔を見ることができるようになったのは確か。

「ただし、時間は1時間な?ずっとゲームはよくないからさ」
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