妹の恋人[完]
だからって急に何かが変わるわけじゃないけど、バスケットの時間以外にも構内で偶然会った時に声をかけてくれる人が増えたり、お昼休みに一緒に食べる人が増えたりして。

徐々にだけど、俺の周りも変わり始めていた。


塾のバイトも忙しく、受験生はついに受験本番で。

去年の今頃は、家庭教師をしていて、自分が試験を受けるかのように緊張していたのを思い出したりして。

今年は人数も多く、また受験校も一つではなくて。

とにかく、皆に合格してほしい。

今まで頑張ってきた実力を発揮できますように。

ただそれだけを願い、その日は塾で皆からの連絡を待っていた。

「浅野先生、受験生の返事待ちなんて初めてでしょう?」

同じように塾で皆からの連絡を待ちつつ、事務仕事をしている長谷川先生が、緊張して落ち着かない俺に声をかけてくれた。

「いえ、去年も受験生の家庭教師をしていたので、胃が痛くなる思いでしたよ」

長谷川先生の分もコーヒーをいれ、座ってからもなんだか落ち着かずにマグカップを握りしめる。
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