妹の恋人[完]
「そうだったんだね。その生徒さんは合格しましたか?」

「はい、おかげ様で」

それはよかったとコーヒーを飲みながら資料をめくっている長谷川先生を見ていると、なんだかすごく落ち着いていて。

「落ち着いていますね」

思わず口からそんな言葉がこぼれてしまった。

「はは。そう見える?今日は全く仕事が進みませんね」

資料をめくる手を止めて、俺の入れたコーヒーを持ったまま窓際に立ち、外を見ていた。

「え、すごく余裕に見えましたけど」

なんだかおかしくて、笑ってしまった。

そうか、やはり長谷川先生でも緊張するんだ。

今頃、皆は試験に挑んでいる時間帯で。

終わったら塾へ顔を出してくれると言っていた子も多くて。

「皆頑張ってましたからね。大丈夫ですよ」

しばらく世間話をして、自習室へ誰かが来たようなので顔を出すと、いつものメンバーの一人で。

この春3年生になる彼は、2年生のほとんどをここで過ごしていた。

「せんせーおはよ」

「おはよってお前、もうお昼近いぞー」

「ははは。寝坊しちゃった」

それでも、俺が彼を知ってからは、勉強もそれなりにやっていて。
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