妹の恋人[完]
筆箱からシャープペンを取り出す。

母さんから誕生日プレゼントにもらったシャープペン。

使い込んですでに新しさなんて全くなかったけど、使いやすくていつもこれだった。

「あのね、浅野君」

ちょっと話辛そうに俺を見て、手に持っていた本を閉じた高橋さん。

「どうしたの?」

「ボタン・・・」

下を向いてつぶやいた声は小さくて、よく聞き取れなかった。

「え?」

「あ、あのね、ボタン・・・学生服の・・・」

一瞬何の話かわからなかったけど、やっと理解できた。

学生服のボタン。後輩たちにあげちゃったボタンのことだ。

「もう、残ってないよね?」

真っ赤な顔をしてごめんね、忘れてねという高橋さん。

その顔を見て、なんだか自分でもよくわからないけどカバンの中に入れていたボタンを取り出した。

「ひとつ、残っているけど」
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