妹の恋人[完]
「最近さ、彼女見かけないね」

久々に会った中野君にまでそんなことを言われて。

「別に、付き合っていたわけじゃないよ」

「え、そうなの?」

きっと、何も知らない人たちは俺たちが付きあっていたと思っていたんだろう。

彼女が姿を現さなくなってからは、別れたという噂が流れていたらしい。

「はは。まあ、どっちでもいいんだけどね」

「あーじゃあ、今週末開けとけよ。年上なんてどう?」

中野君のバイト先の社会人とのコンパ。

年上なんて初めてだけど、とくに予定もないし。

興味がないわけでもないので、飲みに行くことにした。

少し上なだけかと思ったら、30歳前後のお姉さんばかりで。

やけにかわいがられ慣れている中野君を見ているのも楽しかったけど、お姉さんに優しくされるのも悪くなくて。

びしっとしたスーツに、きれいに飾った指先。

ふんわり香る香水も、大人の女性を感じさせて。

いつもと違うドキドキを味わうことができた。
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