妹の恋人[完]
ふとしたきっかけで、彼女と一緒にいる青木君を見てしまい、問いただしたら別れを切り出されたのだという。

「遊びだったからって。彼女って言うよりも、友達の延長って言われた」

泣きながらも、俺に話をしてくれたカナコに、冷蔵庫から水を取り出し、コップに入れて飲ませた。

少し落ち着いてから、再び涙を流して。

「ずっとね、手はつないでくれたけど、キスとかしてくれなかったの」

だから、おかしいなって思っていたんだという。

まだ経験がないカナコが、自分からすることもできずに。

好きな人に触れてほしいと思うのに、何もしてこない青木君。

「好きだと思ってたのに」

再びあふれ出した涙は、終わりがないようで。

真新しいタオルを持ってきてカナコに渡すと、タオルに顔をうずめてしばらく泣き続けていた。

そんな時、タイミング悪く母さんが帰ってきて。

ソファに座っておお泣きしているカナコを見てびっくりしたのか、俺が泣かせたと思ったようで。

「なにやったの!?」

カナコをぎゅっと抱きしめると、母さんは俺に向って怖い顔を向けてきた。
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