妹の恋人[完]
将来の夢・・・。

「国立の医学部へ行きたいんだ。だから、塾も止めないつもり」

ふふっと笑う高橋さん。

目標を持って頑張る姿って、すごく素敵なんだ。

今まで一緒にいてあまり感じなかったけど、笑顔で夢を語ってくれる高橋さんに少しだけドキドキした。

「浅野君は将来何になりたいの?」

自分の夢を語り終えた高橋さん。

改めて聞かれても、やはりこれといったものが思い浮かばない。

俺の父さんは外資系のサラリーマンで、転勤が多く、今のように単身赴任で家を空けることが多かった。

母さんは俺が生まれるまではばりばり働いていたのよ、と言うけど、父さんと同じ会社でOLをしていたらしい。

今はずっと専業主婦で、家に居ない父さんの代わりに家のこともおれたちのこともしっかりやってくれていた。

だから、父さんが単身赴任していても辛い思いはしたことなかったし、月に2度くらい帰ってくるときはとっても楽しくて、家族の仲はとてもよかった。

「んー、まだよくわからないかな」

しっかりとした夢を持っている高橋さんに、まだ何も考えていないことを伝えるのがちょっと恥ずかしくて、でも嘘をつくようなことでもないし。

合格発表の日に、高校の門で待ち合わせをして結果を高橋さんと一緒に見ることにした。

母さんも見に行くっていいそうだけど、一人で行きたいし。

これでやっと春休みを迎えた気分になった俺は、しばらく家でゆっくり過ごしていた。
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