妹の恋人[完]
そんなことを考えながら、固まっていると我にかえった高橋さんがあわてて俺から離れたんだ。

「あ、ご、ごめんね!嬉しくてつい・・・」

顔を真っ赤にして俺の前にうつむいて立つ高橋さん。

俺には、カナコ、だけ。でも。

「行こうか、高橋さん」

真っ赤になっている高橋さんの手を取り、必要な書類を職員室で受け取るとゆっくり歩きながら家へ向かった。

つながった二つの手からは、温かいぬくもりが伝わってきて。

女の子とこうして手をつなぐのは、カナコ以外では初めてで。

すっごくドキドキして、お互い無言で歩いていたんだ。

念願だった高校に合格したのに。

でも、嫌なドキドキじゃなかった。

「あ、あのね、浅野君」

「え?」

突然立ち止まり、繋いだ手をきゅっと引っ張る高橋さん。
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