妹の恋人[完]
自分が酔っぱらって、体がふわふわしている自覚はある。

でも、寄っている割には思考はしっかりしているとも思うけど、何で河合は俺の腕を掴んで歩いているのだろうか?

「駅前の方がタクシーいるだろ?あ、終電近いこの時間だと、逆にタクシーつかまらないのかなぁ」

俺に話しかけてくれているのだろうか、それともひとりごとなのだろうか。

そんな風に話をしながら、それでも駅前へ向って歩く河合に連れられ、俺もゆっくり歩いていた。

「あ、タクシー!」

突然、大きな声を出したかと思うと、俺の腕を掴んでいない空いている方の腕を大きく振り、通りかかった一台のタクシーを止めてくれた。

「助かったなー。家どこ?」

タクシーに俺を乗せ、頭だけ車のなかに突っ込んだ形で俺に聞いてくる河合。

俺が自宅の住所を言うと、安心したかのように体を車の外へと出した。

「運転手さん、お酒飲んでいるんで、まっすぐ家までお願いします」

運転手さんにそう言うと、にこやかに俺に手を振って。

「明日遅刻するなよ!」

そう言うと、タクシーが発車する前に駅前へと歩いて行ってしまった。
< 567 / 587 >

この作品をシェア

pagetop