妹の恋人[完]
「ああ、カナコも。おやすみ」

電話を切りながらちらりと河合を見ると、冷蔵庫から何やら取り出しているところで。

いつの間に冷蔵庫に物を入れていたのだろうか?

「あ、終わった?悪かったな、彼女との電話邪魔しちゃった?」

テーブルに置いてあった缶ビールの一つを俺に差し出すと、冷蔵庫から取り出したつまみを開けながら床に座った。

「いや、もう切るところだったし。それに彼女じゃないよ」

ありがたくビールを受け取ると、缶を開けて乾杯をした。

よく冷えたビールが美味しくて、一気に半分程飲んでしまった。

「そうなの?俺はてっきり彼女かと思ったよ」

「はは。カナコは妹」

机に出されたつまみを口に入れながら、なんとなく気まずくて。

今まで、俺がカナコの話をすると、決まっていいようには取られなくて。

妹のことを可愛いと思うのが、他人から見たら異常に思えるのだろう。

そんな経験から、あまり詳しく話をする気にはなれなくて。

「へー、妹?いいなぁ。俺兄弟居ないし」

河合から返ってきた言葉に、思わず顔をあげると、相変わらずにこにこしていて。
< 574 / 587 >

この作品をシェア

pagetop