妹の恋人[完]
渡り廊下の壁にもたれかかりながら、俺の顔を見てくる高橋さん。

俺よりも視線が下だから、少し見上げるような角度で、ちょっとどきっとしてしまう。

「うん、あ、高橋ワタルと従姉弟なんだって?」

「そうなの。父親同士が兄弟でね、よく家へもきたりするのよ」

ワタルから聞いたの?なんて、高橋ワタルのことを呼び捨てで呼ぶ高橋さん。

従姉弟だし、小さいころから一緒にいたんだから仕方ないよな。

自分にそう言い聞かせつつも、ちょっと悔しいと思うもは普通のこと?

「・・・仲がいいんだね」

つい、意地悪な言い方になってしまった。

こんなこと言うつもりなかったのに。

「浅野君・・・」

高橋さんが少しだけ悲しそうな顔をするから、思わず視線をそらせてしまった。

「ごめんね、そんなつもりじゃなかったんだけど・・・」

いじわる言うつもりじゃなかったんだ。どうしたらいいのかわからず、俯いてしまう俺。

なんだかすごく情けない気分になってきてしまった。

せっかく会いたいと思ったから昼休みに会いに来たのに、これじゃあ意味がない。

「そうだ、浅野君、携帯持ってる?」

スカートのポケットから、可愛らしいピンクの携帯を取り出した高橋さん。

「アドレス、教えて!」

いいでしょう?と俺のほうへ携帯を差し出してくる。赤外線通信をしてほしいって意味らしい。

慣れない手つきで自分の携帯を操作し、お互い番号とアドレスを交換した。

「うれしい」

メールするね!携帯を握りしめてうれしそうに笑う高橋さん。

「俺も、メールするよ」

メールなんて慣れていないけど、電話よりも気軽でいいのかもしれないって初めて思った。

お昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響き、あわててそれぞれ教室へ戻った。
< 81 / 587 >

この作品をシェア

pagetop