妹の恋人[完]
授業が終わり、部活へと移動する。

部室で着替えをしていると、高橋ワタルが来た。

「よぉ」

今まで声なんて掛け合ったこともないのに、なんとなく声をかけてしまった。

「・・・よぉ」

高橋ワタルも小さな声だけど、返事をしてくれる。

どんな話をすればいいんだろう?お互い沈黙のままもくもくと着替えて体育館へ移動する。

早く来た数名が既に走りこんだりしていたけど、俺たちも軽くストレッチをして合わせているつもりはないけど、なんとなく一緒に走っている。

「あっれー!」

2周してストレッチをしようかな、と思っていたところで、松本先輩の声が体育館に響き渡った。

「コウヘイとワタルがセットになってる!明日は雨か!?」

雪じゃねー?などとほかの部員にはやし立てられ、自分でも不思議だと思うんだから、ほかの人から見たらやはり不思議な光景なんだと実感した。

あれだけ一緒にいるどころか目も合わさなかった俺たちが、会話こそないけど一緒に並んで走っているんだからそりゃ驚くだろう。

「なになに、仲良しになれたの?」

ストレッチをしながら俺たちを見比べる松本先輩。

仲良し?どうだろう?でも、少しは近い存在になれたのかも。

同じ女の子を好きだってこともわかったし。それが原因で嫌われていたことも。

「まあ、そーっすね」

高橋ワタルの口からでたその言葉に、俺は驚いて彼の顔をまじまじと見てしまった。

「コウヘイ、思ったよりいいやつだったんで」

なぁ?と話を振られ、思わず頷いてしまった。

でも、仲良くなるのも、悪くないかも。

それ以来、部活の時は高橋ワタルと一緒にいることが多くなった。
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