妹の恋人[完]
どうしてお前の口からは女の子の話が出てこないんだ?興味ないのか?ひょっとして・・・と後ずさりながらいう相沢に、溜息をつきながら「好きな子くらいいるよ」とつぶやいた。

「それがメールの相手ってことか」

まあ、うまくいったら紹介しろよ!と相変わらず豪快に笑う相沢。

相沢のいいところは、理解が早いところだろうなと思う。

あまり口数の多い方じゃない俺の気持ちも、ちゃんとくみ取ってくれる。

調子のいいところもあるけど、ちゃんと相手の気持ちを考えてくれる、かっこいい男だった。

「・・・がんばるよ」

気持ちを伝えてみようかと思う、そう相沢に言うと、にひひと笑って自分の席へ戻って行った。

午後の授業が始まり、テストも近いこともあって教室中が静かでいつもよりも集中力があるような気がする。

そんな中、なんだか自分だけ取り残されたような気持ちになってしまい、集中できずに授業が終わってしまった。

こんなんじゃ、成績だって落ちてしまうかも。それだけは避けたい。

すべての授業が終わり、鞄を持って下駄箱へ向かう。

なんだか今日は集中できなくて、天気と同じようにどんよりとした気分だ。

「はぁ・・・」

ため息をついて靴を履き替えていると、後ろから高橋さんが来た。

「浅野君、待った?」

「いや、今来たところだよ」

よかった、と靴を履き替える高橋さん。

並んで傘をさし、バス停へと向かう。

今日の授業はどうだったとか、他愛もない話をしながらバスを待っていたら、あっという間だった。
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