アレキサンドライトの姫君

-3-

アンネリースの言う通り、ディルクは社交的で貴族達からの信任も厚く、皆に慕われているのがよく分かった。
エーデルもまた誰からも歓迎の言葉をかけてもらい、ほっと胸を撫で下ろしていた。
その後、ディルクに誘われてダンスを一曲披露した二人のその姿は、見る者全ての心を魅了した。
ディルクに相応しいのはエーデルであり、またエーデルに相応しいのはディルク以外の他ならない…それを見せつけるかのような麗しく華やかな舞姿に、万人は完敗を痛感した。
満足そうに微笑んで嬉しそうな表情の国王。
どこか愉しそうに意味ありげに嗤うヴェルホルトと悔しげに眉を顰めるグランツ。
見惚れるような眼差しを二人に注ぐアンネリース。
感情の読める表情で二人を見守るイルザ女官長。
涙を浮かべながら嬉しそうに見つめるミーナ。
扉の近くの柱の陰からそっと広間に目を向けているシャルフ大司教。
そして。ディルクの側近ラオムや、広間の警護を務める騎士団。
その他招待客の貴族の全てが、二人から目が離せずにいた。
黒曜石と琥珀の瞳を持つ王太子と、アレキサンドライトの神秘の輝きを放つ瞳の隣国の姫君。
様々な視線が注がれる中、優雅な二人のダンスは割れんばかりの拍手喝采と祝福で締め括られた。
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