【完】『そろばん隊士』明治編
そこで、と槙村はいう。
「どうにか先生のお力で何とか説き伏せてもらいたい」
と、えらく上からの物言いをしてきたのである。
内心岸島は腹が立ったが、山本は落ち着き払った顔のまま、
「槙村さん、それはあなたが商人の立場になれば、おのずから答は導き出されるかと思います」
「商人の立場…なるほど、つまり商人たちにも多少は利を得させよ、と」
「左様にございます」
山本はうなずく。
「これは妙案、早速やってみましょう」
槙村は足早に戻って行く。
「…岸島さん、これがそれがしのやり方よ」
どうやら山本は、ただ顧問に就いた訳ではなさそうである。