【完】『そろばん隊士』明治編
男は新島襄と名乗った。
「私はこの京のみやこで、聖書の教えを基とした学校を開きたいと思っておりまして」
岸島は目を見開いた。
「それはいささか無理があるのではあるまいか」
無理もない。
京にキリスト教の施設があったのは織田信長の南蛮寺ぐらいのもので、禁教鎖国となってからは絶えて時を経ていた。
先だってようやく禁教は解かれたものの、仏門の強い京でキリスト教の学校を開くというのは、無謀とも岸島には思われた。