【完】『そろばん隊士』明治編
話を戻そう。
「たしか岡崎の聖護院門跡の隣に、盛岡藩の屋敷だった空き地がある。あれなら建てられるのでは」
「それが聖護院門跡は難色を示してまして」
「あれは盛岡の土地ではないか」
「よほど隣にキリシタンが来るのが嫌なのであろうかと思いますが」
「しかたない」
山本は、
「槙村さんに訊いてみるしかないか」
やれやれ、といったような顔で山本は八重の手を借りて立ち上がった。