【完】『そろばん隊士』明治編
翌日。
山本は新島を伴い、岸島に背負われ府庁へ出仕した。
「キリシタンの学校、か…」
知事の槙村は露骨に渋い顔をした。
「しかし木戸さんからの紹介もあります」
「あの人は京を逃げ回ってばかりいたから、京の民がどう考えるかいちいち気にしてすらいないのだ」
槙村は腹立たしかったらしい。
維新前、木戸は医者の子であったが槙村は側役の子で、圧倒的に槙村のほうが身分は高い。
それが。
今では立場が逆である。
「どこか空き地にでも建てればよいではないか」
槙村はどうでもよさげな調子で投げ遣り気味に言った。