【完】『そろばん隊士』明治編
なるほど、と岸島はうなずいた。
「実はそれがしが新撰組に入ったのは、全く違ういきさつがありましてな」
岸島は居ずまいを正した。
「実はそれがしの仇が、桂でありまして」
これには新島も驚いた。
「仇…ですか」
「それがしの父の仇にござる」
岸島は、懐から油紙に包まれた一通の書状を出した。
そこには、
「仇討免許の事」
とあり、旧主である松平伯耆守の華押まで捺されてあった。
新島は、言葉が浮かばなかった。