【完】『そろばん隊士』明治編
◇8◇
桂、つまり木戸孝允が岸島芳太郎にすれば仇である…ということは、必ずしも山本覚馬や新島襄にはプラスではないであろう。
が。
新島は岸島に、
「私が学んだキリストの教えでは、汝の敵を愛せよとあります」
つまり敵にも親があり子があり、妻や夫もあろうということらしいのである。
「だから討つなとは言わないが、討ったところで憎悪の連鎖は切れますまい」
というのが、新島の意見であった。