【完】『そろばん隊士』明治編
◇13◇
しばらく、過ぎた。
大垣屋を新島と八重が訪ねてきたのだが、
「実は岸島さんに、頼みたいことがありまして」
と言うのである。
「近くわれわれは祝言を挙げるはこびとなりまして、その立会人となっていただきたいと思いまして」
これには岸島は驚いたらしく、
「いや、槙村どのにお願い申し上げたほうがよいのでは」
と固辞した。
しかし。
「おれは会津の女の祝言など立ち会わんぞ」
と槙村には断られてしまい、
「ならば岸島さんにお願いをしてみてはどうか、となりまして」
と新島は言った。