【完】『そろばん隊士』明治編
が。
「ご承知かと存ずるが、それがしは所詮は新撰組あがり。露見すればただで済むものでもありますまい」
と岸島は、
「いっそ桂小五郎に頼んでみてはどうかと」
と、実に突飛なことを言った。
「新島どのは桂と昵懇ゆえ、断る理由はあるまい」
なるほどそうだが、
「まさか岸島さんから木戸さんに頼めとは…」
「少なくとも加納の件があってこのかた、山本先生や新島どのにご迷惑はかけられぬ」
岸島は自らの過去に、誇りをおぼえながらも、何かしらの後ろめたさを感じてもいるようであった。