【完】『そろばん隊士』明治編
そこからしばらく、なぜか京の町は長雨がしとしとと続いたのもあって、岸島はすることがないときに聖書を読みふけった。
学問にさまでアレルギーがなかったのであろう、大垣屋に出入りする外国人にもさまざま聞いて回った。
様子を見ていた大垣屋の手代や番頭などは、
「岸島さまは変わっておられますなぁ」
などと口々に噂したが、
「お武家さまはお武家さまで、何かわれわれあきんどには分からぬ思いがあるのでしょうな」
とのみ大垣屋は言い、特にとがめることもなかった。