【完】『そろばん隊士』明治編
◇14◇
新島が新町に英学校を創立する頃には、岸島は聖書の中身をそらんじることが出来るほど読み込んでいたようで、
「あのイエスというのは、如来様のようなものにございまするなぁ」
などと、独特の解釈を抱くようにもなっていた。
が。
外出をすると、いつの間にか加納が付け狙うようにもなっていたのは事実で、
「このままではいつか捕まりましょうなぁ」
という大垣屋の発案で、岸島は横浜の外国人居留地の近くの長屋に部屋を借り、そこでそろばんの塾を開くことにしたのである。
もともと、そろばんの腕で新撰組に採用された男でもある。
かつて本願寺の屯所の頃がそうであったように、近所の子達にそろばんを教えるようになった。